蛍光灯は製造中止にはなりませんが、自主規制するメーカーは出てきています
2015年11月に、蛍光灯が製造中止になるという新聞報道があり、一時混乱を起こしてしまいました。しかし、蛍光灯が製造中止になるというのは間違いです。それでは、今後どうなっていくのでしょうか。解説します。
蛍光灯は「実質製造停止」という報道の意味
2015年11月26日、朝日新聞が『蛍光灯、実質製造禁止へ 20年度めど、LEDに置換』という報道を行いました。書き出しは次のようなもの。「政府は、白熱灯と蛍光灯について製造と輸入を実質的に禁止する方針を固めた。」そこで、蛍光灯が製造禁止になるという報道が一斉になされ、拡散されてしまいました。しかし、記事のニュース部分をよく読むと、蛍光灯が製造禁止になるわけではないことがわかります。
「政府は、省エネ性能が優れた製品の規準を満たさないと製造や輸入をできなくする「トップランナー制度」を規制してきた。来夏をめどにつくる省エネ行動計画には、照明についての品目を一つにまとめることを盛り込む。」
これまでは、LED、蛍光灯、白熱灯と品目ごとに省エネ規準がありましたが、それを照明というひとつのくくりにしてしまうということです。朝日の記者は、ヘビー級もミドル級もライト級も、一緒くたに勝負するボクシング…のようなイメージを抱いたのかもしれませんね。当然、省エネ性能が低い白熱球は不利ですし、LEDは有利です。そこで上の「蛍光灯が実質製造禁止に」という表現がされたのです。しかし、そもそも「トップランナー制度」は製造や輸入をできなくする制度ではないので、そこから誤解があります。
「トップランナー制度」とは何?
トップランナー制度とは、省エネ性能の優れた商品を「トップランナー」として、メーカー各社や輸入業者がその商品の性能に追いつくように「努力を促す仕組み」です。具体的な目標年度や目標規準は国が発表しますが、それに満たなくてもその製品は製造禁止にはなりません。ただし、社名の公開、罰金といったペナルティが課せられます。消費者には義務はなく、好きな製品を選ぶことができます。 また、目標規準を達成したかどうかは、出荷台数による加重平均で出されます。つまり、省エネ能力の低い商品を売っていても、一方で省エネ効率のもの凄く高い商品を売っていれば良いのです。 ただ、省エネ能力を上げるのはとても大変なことですから、省エネ製品の能力がそれほど上げられないのなら、「省エネ能力の低い商品は売らなければいい」ということでもあります。 たとえ需要があっても、価格の安い白熱電球を売る理由が、メーカーにはなくなっていくということです。
では、蛍光灯はどうなるのか?
結論から言うと、蛍光灯がすぐさま製造禁止になることはないでしょう。蛍光灯からLEDへの交換には、基本的には器具ごとの交換が必要で、そのままの器具を使いたい場合には安定器を除いて直接電球につなぐためのバイパス工事をしなければなりません。工事不要のLED蛍光灯も販売されていますが、製品の選び方を間違えると火災の原因になり、誰でも簡単に交換できるというものではありません(弊社では、工事不要のコンバーチブル蛍光管を取り扱っていますが、導入には専門知識が必要です。この製品については、別の記事にて詳しくご紹介します)。
もし急に蛍光灯を製造禁止にしたら、ほとんど全世帯のご家庭で器具の交換や工事の手が必要になるので、とんでもない騒ぎになります。アナログ放送から地デジへの切り替えをご記憶の方も多いでしょう。テレビでの周知活動を徹底して、助成金を出し、10年がかりの計画でしたが、移行当日には10万件ものクレームが発生しました。わずか数年後に蛍光灯を全廃するなど実質不可能です。
また、蛍光灯の省エネ性能は非常に高く、蛍光灯を全廃しても政府が求める二酸化炭素の低減にそれほど寄与しないと言われています。LEDには劣りますが、蛍光灯は白熱灯と比べれば消費電力は少なく、寿命も長いのです。
メーカーは器具の製造から自主規制を開始。蛍光灯が減っていくのは事実
メーカーは、蛍光灯の使用を減らしていこうと、自主的に縮小する動きを見せています。いきなり蛍光灯の製造中止ではなく、まずは蛍光灯器具の製造を中止を行うメーカーが増えてきました。 パナソニックは、2018年度中に蛍光灯器具の生産から完全撤退します。 東芝ライテックは2016年の6月に、蛍光灯器具の製造中止を発表しました。 日立アプライアンスも2012年から蛍光灯器具の新製品を出していません。 遠藤照明も、蛍光ランプの製造を徐々に中止していっています。 メーカーのこうした動きには理由が色々あります。先ほど、蛍光灯の省エネ性能は高いと書きましたが、蛍光灯には水銀を含むことや、調光機能に対応しない、LEDの寿命にかなわないというデメリットがあるためです。LEDが売れるなら、蛍光灯を販売し続けるメリットはあまりないとも言えます。 すぐさま蛍光灯が廃止にはなりませんが、徐々にLEDへの移行という流れは確実でしょう。
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