「LEDはブルーライトが出るから目に悪い」は本当か
ブルーライトを浴びると目に悪いと言われています。
LEDからはブルーライトが多く出ているので、LEDは体によくない灯りなのでしょうか?実はそんなデータはありません。
なぜブルーライトが悪者になっているのか、どのように灯りと付き合えばよいのか解説します。
そもそもブルーライトとは?
ブルーライトとは、名前の通り青い光のこと。特別な光ではありません。太陽光の中にも含まれています。
可視光線は虹と同じように、赤から紫色まで並びますが、この青色の部分がブルーライトです。ブルーライトが目に悪いと言われる理由は赤色に比べて波長が短いため。電磁波は波長が短ければ短いほど、物質を破壊する力があるためです。
なぜ波長が短いと物質を破壊するのかというと、進みながら他のものにぶつかる回数が増えるからです。波長が長いものほど、他の物質にぶつかりにくいため長い距離を進むことができ、波長の短いものほど他の物質にぶつかるので進む距離は短くなります。昼間の空が青く、夕焼けが赤いのもこのためですね。
ピンとこない方は、可視光線以外の電磁波にも目を向けてみると良いでしょう。電磁波は幅が広く、人間の目に光として見えているのはほんの一部にすぎません。
波長が長い順によく知られたものを挙げると、ラジオ波、マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線、エックス線、ガンマ線など。エックス線やガンマ線は、放射線と呼ばれています。放射線を浴びると癌になるのは、放射線の波長が短いために体を通り抜けながらDNAを傷つけ、細胞が自己修復できなくなるためです。
青い光だけ?紫色はなぜ悪者視されないのか
波長が短い順に電磁波を並べてみるとわかりますが、人体に悪影響を及ぼす可視光線に着目するなら、最も影響が大きいのはもちろん「紫色」です。
紫色のすぐ隣にある紫外線は悪者として有名ですね。海で肌が真っ赤に日焼けしたり、プラスチックの洗濯バサミがボロボロに割れたりした経験は誰もがあるでしょう。紫外線は物を破壊する力が強いです。紫色はそのすぐ隣にある電磁波で青色よりも波長が短く、可視光線の中では最も人体に害があると言えます。
しかし「パープルライトが目に悪い」という話は聞きません。
その理由は、太陽光でもLEDでも一番多く含まれる色は青色で、紫色は割合が少ないためです。スマホ、タブレット、テレビなど、じっと見つめて使う電化製品のほとんどが、LEDとなりました。そのために、ブルーライトが目に悪いという話が出てきたのです。
ブルーライトの危険性を訴える団体は「ブルーライトとは可視光線のうち青い光で、波長400nm〜380nmを指します」としています。青い光の話だったのに、蓋を開けてみると紫外線まで含んでしまっています。一体どういうことなのでしょう。
ブルーライトを浴びると目はどうなるのか
ブルーライトは波長が短いので、網膜を傷つけるとされています。ブルーライトを一躍有名な悪者にしたメガネ屋さんのサイトでは、「ブルーライトは紫外線級の強い光」「エネルギーが高く、網膜にまで達するほど」と書かれています。
確かに青色(ないし紫色)は他の色に比べて波長が短いですが、性質は異なるので、「紫外線級」という表現は適切ではありません。ブルーライトの定義が紫外線を含むものであるなら、そもそも「紫外線級」も何もありません。それは紫外線なのですから…。
また、波長が短い光は到達距離は短くなるので、青色が高エネルギーだから網膜に達するというわけではありません。赤色も黄色も網膜には届きます(そうでないと見ることができません)。
と、何だか怪しい表現がてんこ盛りであることがわかります。
ちなみにこのサイトには、具体的にブルーライトを浴びると目がどうなる、とは一切書かれていません。「身体への影響が懸念され」「子どもたちの眼への影響は深刻」などとあるばかりです。
実は、ブルーライトが実際に目にどのように悪影響を与えているかという科学的根拠はなく、医学的データも一切ないのが現状です。
太陽光の方がブルーライトは多い。夏の屋外は屋内の1,000倍
LEDに含まれるブルーライトの光生物学的な危険性については、欧洲ランプ工業会という団体がフランスのANSES(国立食品環境労働衛生安全庁)からの質問に回答した内容が比較的信頼性が高いでしょう。
この文書は、一般社団法人日本照明工業会のサイトにて公開されています。(http://www.jlma.or.jp/anzen/chui/bluelight.htm)
欧洲ランプ工業会は次のように回答しています。
・他のすべての光源と同様にLEDランプにも少量の青色光が存在する。
しかし、それは、自然昼光からの放射のごく僅かな部分であり、白熱電球、ハロゲン電球や省エネルギー光源又は蛍光ランプなどの他光源の放射に類似している。
例えば、夏の1日の青色光の暴露量は、屋内の人工光と比較すると少なくとも1000倍以上高い。
・(ANSESの)レポートは、継続時間及び強さに関係なく光源を直視することに起因する網膜損害-青色光化学物質レチナール障害として知られている-の危険性に焦点を合わせている。
消費者には、直接太陽を見つめる現象としてなじみ深い。いずれにせよ、我々人間は身を守るために、目を閉じるか目をそらすなど、生まれながらの反射運動を持っている。
大事なのは長時間直視しないこと
欧洲ランプ工業会は、ブルーライトをどれだけ浴びても安全だとは断じていません。「通常でない方法で青色光にさらされるとき、青色光は網膜に損害を与える可能性がある」とは言っています。
しかしながら、それは太陽を見つめた時に目に痛みを感じるのと同じことで、光の強さと暴露時間の問題でしかなく、わずかな青色光を恐れるのはナンセンスだというようなことを言っているのです。
青色光が人体にそれほど害悪なら、よく晴れた真っ青な空の下は危険だということになりますが、もちろんそんなことはありませんね。
ただし、PC、スマホ、テレビなど、青色光への曝露時間が急上昇した現代生活に当てはめて考えてみると、あながち杞憂とは言えないのではないか?という考えもあるでしょう。
太陽光を直接見つめることはあまりありませんが、モニタはそれ自体が発光していますから見ないわけにはいきません。欧洲ランプ工業会は、「危険があるなら人間は自然に目をそらすはずだ」と言っていますが、それもちょっと暴論かもしれません。
一体1日何時間までスマホやPCを見ていても大丈夫なのか?といったデータはありませんから、現在私たちにできることは、過剰に恐れず、情報を聞き漏らさないことでしょう。気になる方は「長時間/直接」見ないことです。
照明をLEDにすることは問題ない
光には、直進性があります。レンズを使うと簡単に屈折しますし、物にあたると拡散するので、厳密には直進しかしないわけではありませんが、基本的にはまっすぐ進む性質があります。
ですから、空間をLEDで照らしている時に目に入ってくる光は拡散した光でしかなく、高原と同じ強いエネルギーをもって網膜に光が到達するということはないのです。
工場、学校などでLEDを導入する際は心配される方もいますが、光源を直接長時間見つめない限り、目に対するLED照明の害悪はほぼないと言って良いでしょう。
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